大本山石山寺~座主の鷲尾龍華様の「人生」に迫る!~

取材企画第4弾は、2024年の大河ドラマ、「光る君へ」の主人公、”紫式部”のゆかりの地でもあることから、今後教育旅行の場としても大注目の「大本山 石山寺」へ行って参りました!

今回はなんと、第52世座主鷲尾遍隆様の後任であり、747年とされる奈良時代の創建以来、初の女性座主である、鷲尾龍華 にお話しをお伺いすることができました。

本日のインタビュイー

「大本山 石山寺」第53世座主 鷲尾 龍華 様

【僧侶になると決心したきっかけ】

鷲尾様:私は石山寺の中で生まれ育ち、父が先代の座主でした。

兄弟がいなかったことも関係しますが、小さい頃から「お坊さんになりたい!」という気持ちがあったんです。

両親もそれを応援してくれていて、中学の時に得度(※)をして、そのときに”龍華”という名前をいただきました。

※得度:「戒律」を授かってお坊さんとしての第一歩を歩み始める段階のこと。

山本:中学生からお坊さんになることが決まってたんですね…!
ちなみに、なぜお坊さんになりたいと思ったのですか?
また、なぜ早いタイミングでお坊さんになる決心ができたのですか?

 

鷲尾様:お坊さんが衣を着て、座って、お経をあげている”姿”が、自分にとってとてもかっこよく憧れでした。
小学校の卒業文集の将来の夢にも書いたくらい、”なりたい”という想いを強く持っていました。

 

山本:でも女性のお坊さん、住職さんってとても珍しいですよね。
なかなか前例の方が思いつかず、「女性でもなれるものなのかな?」と思ってしまいます。

 

鷲尾様:そうですね!でも今は若い女性や学生さんでお坊さんになりたいっていう人が増えてきてるんです。

今年東寺のほうに修行僧の指導に行かせていただいた時に、20代の女の子が2人くらいいました。

よく聞くのは、学生の頃や社会人を経験していろいろと悩んだ時に、仏教の本を読んで、“お坊さんっていいな”と思ったり、”仏教学んでみたいな”と思った。という人もいらっしゃいました。

モデルというと、思い浮かぶのが瀬戸内寂聴さん…?

自分はそこからはまだまだ離れているけれども、若い人でお坊さんを志す人がでてきてくれたらとても嬉しいです。

山本:お坊さんを志す若い女性の方たちにとって、鷲尾様のように若くしてご住職になられたというモデルがいるのは、とても大きな存在ですね…!

ちなみに「住職になる」という最終のゴールはあるものの、大学では西洋美術を学ばれてたり、そのあとは一度、一般企業で働かれてたりと…

鷲尾様の人生のターニングポイントについて詳しく教えてください!

人生のターニングポイントについて

1.進学/大学生活について

大学の専攻に関しては、なぜ日本美術史じゃないの?とよく言われてました(笑)

元々小さい頃から、母に美術館に連れて行ってもらうのが好きだったんです。

その影響もあって、西洋の絵画、特にシャガールという画家の作品が好きだったんです。

この研究だったら、2年という長い期間研究しても、苦にならないだろうと思いました。

逆に日本のものには普段から囲まれすぎて、改めて研究する気が起らなかったのかも…。

2.就職/社会人生活について

その後、一般企業に就職しました。

なぜかというと、お寺をやっていく中で、1回社会を見て、お務めの経験を積んでからお寺に戻ろうと思ってたからです。

ただその頃から、地域の人の「目線」を気にしながら生きている時がありました。

例えば、「どういうところに就職すればよく見られるだろうか…」とか。

考えすぎてすごくしんどくなっちゃったこともありましたね。

私の場合は軸に仏教があるので「なぜ今苦しいのか?」を突き詰めて考えることをしてました。

そのなかでこの仕事は向いてないんじゃ?実はあんまりしたくないんじゃ?って思えてきて…

とてもいい会社だったし、期待していただいてたのもあって、そこを3年で辞めるのはもったいない!と周りの人にも言われたり、色々と悩んでいました。

3.転機/苦悩を乗り越えた瞬間

そんな時、「弘法大師と東寺の秘宝」という展覧会に行ったんです。

そこで、弘法大師さんが20代の時に書いた本に出会いました。

弘法大師さんって、すごいエリートコースを歩まれていたんですが、大学を途中でやめて、山林に入って修行していくんです。

敷かれたレールから飛び出て、何にもないとこで自分の力だけで挑戦した結果、すごい人になった。

ちょうど自分と同じ年齢の時に書かれた本ということもあり、自分とリンクする部分が多く、すごく感銘を受けました。

このことがきっかけで、やっぱり仏教の道、お寺の世界に戻ることをきめました。

4.編入/お坊さんとしての道へ

会社を辞めた後はすぐに、種智院大学に編入をして勉強しなおしました。

仏教の歴史、いろんな宗派のこと、声明(しょうみょう/節のついたお経)とか、梵字(ぼんじ/ご塔婆などに書く字)を習うことができたりと、仏教について幅広く学べる大学があると知り、自ら学びたい!と思いました。

なぜなら、自分の中の考えていることは仏教的に考えるとどうなんだろう?ということを知り、形にしたいという想いがあったからです。

見学日じゃないのに勝手に見学を希望しに行ったり…今思うとすごいことしてたなあ…(笑)

5.そして現在/石山寺初の女性座主として

今思えば、その本と出会ったタイミングが人生のターニングポイントでした。
もしこのタイミングで選択をしていなかったら、今の自分にはなっていなかったかもしれません。
例えば仕事を続けて結婚をしていたら、その旦那さんが座主になってたかも…とふと思ったりします。

なにより、編入したその日に、先代の座主でもある父親のガンが見つかって…
その後ずっと闘病生活が続いたりと、色んなことがつながった瞬間でした。

会社勤めを終えて、退職して迎えた4月の入学式。父が発病して入院して。
大学からの帰り道、桜並木の田んぼの畔道を歩きながら、「自分自身でこの道を選んだんやなあ。ここから頑張っていこう。」

そう決心したときの景色が、今でも鮮明に自分の中に焼き付いていて、思い出深いです。

・・・

山本:その景色を想像して、とても鳥肌が立ちました…
ご自身の勇気ある決断によって、大きく運命が動いた瞬間だったんですね。
鷲尾様のキャリアは、将来について不安に思う学生にとって、とても勉強になることが多いと感じました。

 

▽最後に、そんな子どもたちに伝えたいことがあればお聞かせください。

これからの人生を考えるうえで、大事にしてほしいこと

=自分に正直になって、まずは人に話してみること。

・本当に自分のしたいことは何なのか

・自分は何が好きなのか

・何をしているときに幸せだと感じるのか

人間、自分の心には嘘がつけないもの。

嘘をつき続けているとどこかで心が弱ってしまったりします。

だから、親とか、先生とか、信頼している人にまずは喋ってみる。

そういう機会がない子は、自分自身が聞く側になって、自分が起点となる。

“お互い”に支えてあって、いってほしいなあ、と願います。

~取材を終えて~

石山寺で生まれ、中学の時から将来お坊さんになることが決まっていたにも関わらず、決められたレールの上を走るのではなく、自らの意思で人生を選択、決断し、運命を開拓されてきた…

いわば「生きる力」に、本当に感銘を受けました。

教育旅行の場としても大注目の石山寺、是非皆様も足を運んでみてはいかがでしょうか?(インタビュアー:山本 実璃)