目次
農業遺産とは?
農業遺産は、伝統的な農林水産業を営む地域(農林水産業システム)を認定する制度のこと。
国連食糧農業機関(FAO)が認定を行う世界農業遺産と、農林水産大臣が認定を行う日本農業遺産があります。
農業遺産として認定された地域では、概ね100年以上もの間、脈々と受け継がれてきた伝統的な方法で農業・林業・漁業が営まれています。
これらの伝統的な農林水産業は、地域の気候、地形、歴史的背景などに育まれて形成されたもので、そこにしかない、地域固有の食文化や風土・景観を生み出しています。
「農業遺産」が教育旅行の場に適している理由
農林水産省は、主に小学生・中学生に向けて、農業や農村の大切な役割を広く伝えるため、「農業学習」を推進しています。
農業遺産が教育旅行の場に適している理由
- 食生活が自然の恩恵の上に成り立っていることに気づくことができる
- 自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動への理解を深めることができる
- 食育について学ぶことができる
「食育基本法」における農林漁業体験の位置づけ
食育基本法(平成17年法律第63号)
・食料の生産から消費等に至るまでの食に関する様々な体験活動を行うとともに、自ら食育の推進のための活動を実践することにより、食に関する理解を深めることを旨として、行わなければならない
・農林漁業に関する体験活動等が食に関する国民の関心及び理解を増進する上で重要な意義を有することにかんがみ、農林漁業に関する多様な体験の機会を積極的に提供し、自然の恩恵と食に関わる人々の活動の重要性について、国民の理解が深まるよう努める(第11条第2項関係)
・国及び地方公共団体は、農林水産物の生産、食品の製造、流通等における体験活動の促進等必要な施策を講ずるものとする
第4次食育推進基本計画(令和3年3月31日食育推進会議決定)
・農林漁業者等は、学校、保育所等の教育関係者を始めとした食育を推進する広範な関係者等と連携・協働し、幅広い世代に対して教育ファーム等農林漁業に関する多様な体験の機会を積極的に提供するよう努める。(第3 5.(2)関係)
食料・農業・農村基本計画(令和2年3月31日閣議決定)
・消費者や食品関連事業者に積極的に国産農産物を選択してもらえるよう、農林漁業体験、農泊、都市農業、地産地消などの取組間の連携強化により消費者と農業者・食品関連事業者との交流を進め、消費者が日本の食や農を知り、触れる機会の拡大を図る。(第3 1(3)1 関係)
・・・上記からも、子どもたちに農林漁業に関する学び・体験の場を積極的に提供しなければならないことがわかります。
小学生・中学生向け「農業学習」コンテンツを公開!by 農林水産省
農林水産省は、小学生・中学生のこどもたちを対象として、農業の歴史、農業遺産、農村の共同活動などの農村の大切な役割や魅力を学習することができる4つの教材を制作されています!
- 「草刈りは地球を救う」~SDGs達成につながる農村の共同活動~
- 農業遺産で学ぶ「米づくり学習」
- 農業遺産から見る地域の特色を生かした持続的農業・林業・水産業
- ミーとトラ 瑞穂の国の大冒険~田んぼの軌跡をたどる旅~
★詳しくはコチラ:https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kantai/240311.html
教育旅行におすすめの「農業遺産」3選
宮城県大崎地域
持続可能な水田農業を支える「大崎耕土」の伝統的管理システム
冷害や洪水,渇水が頻発する自然条件を耐え抜くために巧みな水管理や屋敷林「居久根」による災害に強い農業・農村を形成しています。
世界かんがい施設遺産に登録された「内川」、国指定史跡である「旧有備館および庭園」、屋敷林「居久根」に囲まれたアトリエなど、どれもこの地域の歴史を感じられるものばかり。
農業体験、田畑に生息する生き物との触れあい、酒・味噌・醤油の伝統的な発酵食文化に繋がる蔵見学、大崎耕土で育った野菜料理など、大崎地域の歴史と食文化から様々な学びがあります。
★モデルコースはコチラ:model-1.pdf (maff.go.jp)
▽「宮城県」への教育旅行に関する助成金情報はコチラ
静岡県わさび栽培地域
静岡水わさびの伝統栽培-発祥の地が伝える人とわさびの歴史-
日本の固有種であるわさびを、沢を開墾して階段状に作った わさび田で、肥料を極力使わず湧水に含まれる養分で栽培する伝統的な農業を継承。
わさびは日本列島で独自の進化を遂げた固有種であり、自生する野生のわさびが日本各地で見られます。
当地域では、約400年前の江戸時代初期に世界で初めて栽培が始まり、長い歴史の中で地域に適した数多くの品種・系統と栽培技術が生み出されてきました。
★参考サイトはコチラ:https://shizuoka-wasabi.jp/
滋賀県琵琶湖地域
「森・里・湖(うみ)に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」
“里湖(さとうみ)”とも呼ばれる循環型システムで、千年の歴史を有するエリ漁や独特の食文化が継承されています。
多くの在来魚が生息する琵琶湖の湖辺では、弥生時代以降、人が開発した水田にニゴロブナ等の湖魚が遡上し、そこを繁殖場として利用するようになりました。
そして、人は農作業の傍ら、こうした湖魚を捕獲する待ち受け型の漁法を発展させてきました。
鎌倉時代には、漁獲の競合に対処するためエリの設置を制限するなどの社会的な仕組みも築かれ、現在の資源保全や漁業調整の礎となっています。
また、多様な主体が参画して琵琶湖の水質や生態系を保全する、現代の「環境こだわり農業」や水源林保全にもつながってきています。
★参考サイトはコチラ:琵琶湖システム|滋賀県ホームページ (shiga.lg.jp)
▽「滋賀県」での環境学習に関する記事はコチラ
まとめ
いかがでしたでしょうか?
農業遺産は、社会や自然の変化に適応しながら進化を続けている「生きている遺産」です。
大切な遺産をまもる「仕組み」を学ぶことは、児童・生徒にとっても実りある教育旅行となること間違いなし。
是非、教育旅行の行先としてご検討くださいませ♪