社内アイデアコンテストとは、自社内外から優れた事業アイデアを募り、競い合うコンペのことです。
さまざまな企業が社内コンペに取り組んでいるにもかかわらず、成功企画が一握りなのはなぜでしょうか。
それは、社内アイデアコンテストを行う目的が曖昧だからかもしれません。
この記事では、社内アイデアコンテストを行うメリットなどを整理し、大手企業で実際にあった企画例を紹介しながら、社内コンペを成功させる秘訣を紐解いていきます。
目次
社内アイデアコンテストを行う目的とメリット
社内コンペを成功させるには、目的とメリットを明確にして企画しなければなりません。
まず最初に、企業がアイデアコンテストを行う目的とメリットを整理しておきましょう。
新規事業に適した人材を選出する
社内アイデアコンテストは、社員の隠れた才能を発掘できます。
才能を上司から認められずに埋もれている人、他部署で活躍するも、別の分野で優れたアイデアを持っている人など、社内にはまだまだ優秀な人材が眠っているかもしれません。
プレゼン力や資料作成、マネジメント力などで認められる人もいるでしょう。
アイデアコンテストは社内の人材を発掘する機会でもあるのです。
アイデアを出した、あるいは受賞アイデアチームの一員として関わった事業なら、企画への挑戦意欲も高いはずです。
社内アイデアコンテストを通して、選ばれたアイデアに適した人材を選出できます。
社内人材育成
社内の有望社員と組んだチームで参加すれば、コンテストへの準備を通して人材を育成できます。
社内コンペのリーダーとなれば、通常業務と並行して準備をしないといけないため非常に忙しく、チームのマネジメント能力を身に付けなくてはなりません。
アイデアが受賞しなかったとしても、メンターや経営陣に能力を認めてもらえる可能性があります。
その結果、再度アイデアを練り直して事業化にこぎつけたり、別のチームや新規事業などに抜擢されたりするかもしれません。
何より新規事業を一から全て考えることで、チーム全員が一回り成長することでしょう。
このように、社内アイデアコンテストは人材育成の場でもあるのです。
新規事業のアイデアの創出
アイデアコンテストの一番の役割は、新規事業のアイデアを生み出すことです。
変わり続ける現代で企業が生き残るためには、既存事業を伸ばすことも大切ですが、同時に新規事業を成功させる必要があります。
しかし、新規事業のアイデアやヒントは簡単に浮かぶものではありません。
新規事業の優先度は、既存事業より下がるうえに、日々の業務に追われていることが多いため、インセンティブ無しで自分から真剣に新規企画を考える社員はあまりいないのが実情です。
そこで企画を発掘するために、社内アイデアコンテストを開催しましょう。
社内アイデアコンテストを成功させるコツ
社内アイデアコンテストをただ実施するだけでは、アイデアが集まらない可能性があります。
今から紹介するコツを実践して、優秀なアイデアが集まるようにしましょう。
しっかりとした報酬を用意する(インセンティブ)
賞金や事業開発の約束、昇進、異動など、入賞アイデアを提出した人には相応の報酬を用意しましょう。
明確な報酬が約束されていれば、社員のコンテストへのモチベーションがアップし、優秀なアイデアを出そうとするはずです。
この報酬を反故にしてはいけません。
アイデアを出した社員へ報酬を用意し、その業績をはっきりと認めましょう。
社外審査員を用意する
社外から審査員を招くのも成功させるコツの一つです。
有名人を招聘すれば話題になりますし、「憧れの●●さんに見てもらえるなら参加してみたい」と思う社員もいるでしょう。
社内評価が低い社員であっても、社外審査員の評価は違うかもしれません。
社内審査員だけにしてしまうと、自社の視点のみに凝り固まってしまいがちです。
社外審査員は優れたアイデアをフラットに評価するためにも必要な存在です。
フォロー体制をしっかりと用意する
コンテストで優勝や入賞など評価されたアイデアは、事業化を目指せるようフォロー体勢を用意しましょう。
どんなに素晴らしいアイデアだったとしてもそのままでは事業化できないこともあります。
しかし、審査員や役員、関連部署などが、なるべく事業化にこぎつけられるように指導していくことが重要です。
入賞作品を事業化できたら、応募者のモチベーションが上がり、次回のコンテストでも優れた作品が集まることでしょう。
社内のアイデア募集による事業展開は厳しい?
アイデアコンテストが開催されたにもかかわらず、事業展開につながらない場合もあります。
よくある例は再現性のある案が全く出なかったため、形式だけでもと無理やり複数の案を選出してしまうパターンです。
無理やり通過したアイデアが経営陣に認められるわけがなく、最悪フェードアウトしてしまうかもしれません。
事業展開がされなければ、コンテストにかけた経費や審査員の工数などが無駄になってしまいます。
コンテストでは「どういったアイデアを求めているか?」「事業規模的に利益が出るアイデアか?」「そのアイデアを欲している顧客はいるのか?」などを具体的に提出させるようにしましょう。
社内コンテストの事例
参考までに、以下の有名大企業で行われた社内コンテストの事例を紹介します。
- サイバーエージェント
- リクルート
- LIFULL
こちらの3社は毎年アイデアコンテストを開催しており、すでに何案かは事業化、子会社化した実績があります。
サイバーエージェント
アメーバブログやゲーム事業などで有名なサイバーエージェントは2006年より「あした会議」というコンペを、年2回のペースで開催しています。
その名の通り、サイバーエージェントの「あした」を考える会議という意味で名付けられたコンテストです。
「あした会議」では、役員が社員から4名を選抜してチームを結成し、一定期間の準備を終えた後に社長の前でプレゼンをします。
2020年はコロナ禍で緊急事態宣言が発令されていてもオンラインで実施し、合計16案を決議しました。
2020年までにあした会議から子会社化した数は32社で、累計売上高は約2,880 億円となっています。
リクルート
リクルートの社内コンテスト「RING」はリクルートグループの全従業員が参加できます。
同コンテストでは過去に「R25」「スタディサプリ」「ゼクシィ」「カーセンサー」など、リクルートを代表する事業が生まれました。
2017年の「NewRING byRMP」では、2次審査員に堀江貴文氏、田村淳氏、今野穣氏らを招いています。
「ゼクシィ」は今や結婚するカップルの必読書とも言える立ち位置を確立していますが、当時の経営陣には不評でした。
「New RING」でも落選していたのですが、考案した社員がめげずに提案し続けて事業化し、リクルートの代表事業の一つとなりました。
LIFULL
住宅情報サイト「LIFULL HOME’S(ライフル ホームズ)」を運営するLIFULLでは、「OPEN SWITCH」というビジネスプランコンテストを開催しています。
2019年から応募資格は社内外を問わず、一般向けと学生向けでコンテストが分かれています。
LIFULLのビジョンとSDGsの17の目標のいずれかに沿った企画案を考えることが応募条件です。
入賞者にはLIFULLによる事業検証のサポートが確約されています。
過去のコンテストでは、定期的に花を届けるサービス「LIFULL FLOWER」が事業化しました。
まとめ
社内コンペではしばしば「いい企画が集まらない」という声を聞きます。
そうならないよう、社内コンテストを開催する前に目的を整理し、インセンティブやメンターのフォロー体制といった受賞者へのメリットを社内外へアピールしましょう。
社外の著名人に審査員・メンターになってもらうのも効果があります。
新規事業の企画には、ある程度リスクが伴うものです。
しかし、リスクを乗り越えなければ会社の成長はありません。
優れたアイデアを積極的に支援する姿勢をアピールし、社員のモチベーションを上げましょう。